「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

最初の記事

リーディングによって、相手を導く ~Level1:生徒との関係を構築するNLP~【第2章】【06節】

ペーシングバックトラックによって、徐々に相手との親近感を生み、

ラポールを築いていく技法を説明しました。

 

基本的な技法として、この2つは大変重要なのですが、

実際の授業においては、必ずしもこれだけで十分なわけではありません。

 

例えば、バックトラックは相手の話した内容を繰り返す手法ですので、

仮に相手が間違った発言をした場合、それを修正することができません。

 

 

前節で、バックトラックを行いながら授業を進める場面を紹介しましたが、

これは生徒が自ら正しい答えを導くことができたので、バックトラックのみで

進めることができたのです。

 

では、もし生徒が、間違った答えを導きそうになった場合には、

どのように対応すればよいでしょう。

 

私は、こうした時の対応こそ、先生の真価が問われるときだと考えています。

 

バックトラックは相手主導で会話が進んでいきましたが、生徒に正しい道筋を示すときなど、逆に先生が生徒を導いて会話を進めることも必要になります。そのようなときのNLPの手法に、「リーディング」と呼ばれるものがあります。ペーシングやバックトラックによって基本的なラポールが築けていれば、相手がこちらの望ましい方向に進んでくれるように、こちらが少しだけ手助けをして誘導する、それがリーディングです。

 

ここで注意していただきたいことは、正しいこと、あるべき方向を相手に強要したり押し付けたりするのではないということです。相手が今持っている考え方をもとに、それに対して問いかけ、働きかけをすることで、相手が自ら正しいこと、あるべき方向を見つけられるよう、誘導・手助けすることがリーディングです。

 

先ほどの授業の例にリーディングを取り入れると、こんなイメージになります。

生徒:先生はさっき、こういう問題を解くときには○○に注目するんだ、っていいましたよね。

先生:そうだね、○○が大切だって言ったね。(バックトラック)

生徒:ということは、この問題では××が○○になると思うから・・・(ここで生徒が誤ったことを言う)

先生:なるほど、そんな気がするね。(バックトラック・先生は生徒の過ちに気づいているが、一旦受け入れる)じゃあ、1つ1つ整理してみようか。(ここから先生がリードする)さっきの▽▽に対応するのは、今の問題では何かな?

生徒:えーっと、▽▽に対応するのは□□かな。

先生:うん、そうだね。なら、○○に対応するのは何かな?

生徒:うーん、あ、そうか、××じゃなくて◇◇だね!

先生:そうそう、そうだね。そしたら、そのあと同じように考えるとどうなる?

生徒:だから、◇◇が◆◆になって、答えは△△になると思います。

先生:そう、答えは△△になります。よくできたね。

 

注目していただきたいのは、もし相手が間違ったことを言っても、いきなり否定せず、一旦それを受け入れ、共感する、そして、「違う」「そうではなくて」といった否定的な表現は使わずに、「1つ1つ整理してみようか」と肯定的な表現で相手をリードしている点です。

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そのリーディングの結果、相手が自ら過ちに気づき、修正できるよう、うまくリードしていくことこそが、先生の仕事なのです。

 

次の記

リーディングを理解し、応用する ~Level1:生徒との関係を構築するNLP~【第2章】【07節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

 

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