生徒のモヤモヤを解消し、”!”を生み出す ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【08節】
私事で恐縮ですが、私自身が学生の時の印象に残っている勉強の1つに、
当時中学生だった私は、学校の授業で初めて三平方の定理を習いました。
その時、数学の先生は下記①の方法で三平方の定理を証明し、
とりあえず「a2+b2=c2」という定理を暗記するよう話されました。
証明で導かれた式はそれほど難しいものではないので、
覚えろと言われれば覚えることはできるのですが、
どうも証明方法が強引で「美しくない」と、子供心ながらに感じました。
なぜ突然辺の比の話題を持ち出し、なぜ全く関係のない2つの式を足さなければ
ならないのか。なんて強引に導かれた定理なのだ。
というのが、最初の私の感想でした。
その数週間後、当時通っていた塾の数学テキストに、やはり三平方の定理の証明
が書かれていました。
その証明は下記②の方法でした。
これを見たとき、正直私は感動しました。
学校で習った証明に比べると、実にシンプルで、視覚的にもわかりやすい。
強引に導いている感じがなく、自然と導かれた定理、といった感じがしました。
この証明方法はまさに私に”印象”として残り、証明方法を暗記しようとしなくても
既に頭に残っていました。
おかげで、周りの生徒のほとんどは覚えていないであろう
三平方の定理の証明方法を覚えることができ、テストで突然、
「三平方の定理を証明せよ」
といった問題が出題されても、解答することができたのです。
私のこの体験を振り返ると、次のようなことがわかります。
すなわち、
「それまでモヤモヤしていたことが、自分にとってしっくりくる方法で説明され、
すっきり理解できるようになると、そのギャップも手伝って印象として強く残る」
ということです。
私が講師となってからも、三平方の定理に限らず、数学ではいろいろな
「定理の証明」を授業で行いましたが、その時に意識したことは、
その生徒が学校の授業で習った方法とは異なる方法で証明する事でした。
これは、第3章で挙げた
「1つのことをいろいろな視点でしつこいくらいに説明する」
ことにも通じます。
その生徒にとって、どの説明方法、証明方法が最もしっくりくるのかは、
その生徒しかわかりません。またその生徒も1つの説明しか紹介されていなければ、
世の中にはその説明しかないのだと思い、自分にしっくりこない説明・証明方法で
無理に暗記しなければならないことになってしまいます。
それは、とても不幸なことです。
ですので、先生は、
- 1つの物事にもいろいろな考え方があること
- いろいろな考え方の中でその生徒にあった考え方を見つけてあげること
- 2により、生徒が抱えているモヤモヤをすっきり解消させて上げること
を意識することで、生徒に”!”を生み出しやすくなり、印象に残る授業にできる
可能性を高めることができるのです。
三平方の定理の証明に話を戻すと、最初に私が学校の授業で聞いた証明法でも
数学の授業としてはもちろん十分なのですが、
「生徒の印象に残す」(少なくとも私の印象に残す)
という点では、難しい方法だったように思います。
ですから、先生自身、授業で教える事1つ1つについて、日ごろから
「他にうまい説明の仕方はないだろうか。」
とアンテナを張って、教え方のレポートリーを殖やすことが大切だと思います。
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