子供は競争が好き ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【02節】
子供は競争が好き、という点については、多くの方に同感いただけるかと思います。
まずは「競争」を授業に取り入れることを考えてみましょう。
そもそも、競争の効用とは、いったいなんでしょうか。
以前テレビで、むやみに生徒間に順位をつけないように、例えば運動会の徒競走で
みんなが手をつないで並んでゴールするシーンが映し出されていました。
個人的には非常に疑問に感じる光景でしたが、それはそれで、生徒間に差別を生みた
くない、運動が得意な子には苦手な子に対する優しさを持ってほしいなど、学校の
先生なりの考慮があるのでしょう。
ただ一方では、競争を通して、もっと上に行きたい、負けたくない、という欲を
生徒自身の内側に生むことも重要な要素だと思いますし、そういった欲から人間は
自分を成長させることができるのです。
むやみに何でもかんでも競争を取り入れる必要はありませんが、子供の闘争心に
火をつけるため、適度に生徒を競争に巻き込むことも必要なことだと思います。
では、授業に「競争」を取り入れるには、どのような方法が考えられるでしょうか。
まず、授業における「競争」の形態として考えられるものを考えてみましょう。
これは、「生徒の競争相手になりうる者は誰か」ということにもなります。
- 周りの生徒との競争
- 生徒本人の過去との競争
- 先生との競争
- 時間との競争
- 生徒自身の理想との競争
周りの生徒と競うというのは、最もわかりやすいと思います。
テストの点数や偏差値、問題を解くスピードなどを、他の生徒と比べることです。
しかしこの競争は、どちらかというと勉強が得意で、
「自分はやればできる」
と考えられている生徒において有効な方法だと思います。
逆に勉強が苦手な生徒が、自分よりも勉強が得意な別の生徒と比較され、
「もっとがんばって追いつこう。追い抜こう。」
と言われたところで、生徒本人の中に
「よし、がんばろう」
という気持ちが生じることは、なかなか考えにくいものです。
むしろ、
「自分は周りの子より成績が悪いんだ」
という点を意識付けてしまう可能性もあります。
以前にも述べましたが、「自己肯定感」を植えつけることこそ先生の仕事であり、
逆に「自己肯定感」を削ぐような言動は極力避けなければなりません。
周りの生徒と比べるのは、方法としては簡単なのですが、あまり安易に用いてよい
方法ではないのです。
次に、生徒本人の過去との競争というものがあります。これは、
「前回70点だったから、今回は80点を目指そう」
「前回10分で解けた問題を、今日は8分で解いてみよう」
といったものです。これなら、その生徒の学力レベルにかかわらず、広く使える競争
です。自分自身との競争は、生徒自身、自らの成長を感じやすい方法だと思います。
また、生徒本人も、「前回の自分よりも絶対に良い成果を出そう」という気持ちが
自然と芽生え、目の前に課題に対し本気で取り組みやすくなります。
また、「先生と生徒の競争」という形態も考えられます。特に個別指導塾では、生徒
が授業中に競う”他人”は先生しかいません。この、「先生が競争相手になる」という
選択肢は、ぜひ有効に活用していただきたいと思います。
例えば、こんな競争が考えられます。
国語:
- にんべんの付く漢字を沢山挙げたほうが勝ち。(数では先生が勝つかもしれませんが、先生が思いつかなかった漢字を生徒が思いつくことはよくあります。)
- 音読は生徒と先生が1文ずつ交互に読む。(勝敗はありませんが、先生のように上手に、つかえずに読みたい、といった競争意識を、自然と生徒の中に生み出すことができます。)
算数:
- 異なる立方体の展開図を沢山書いた方が勝ち。(例えば、生徒は立方体の展開図が全部で11種類もあるとは思っていないことが多いです。競争とは言っていますが、生徒が頭の中で立体図形を精一杯想像して考えている時間が大切ですので、その時間を十分取れるよう、先生は配慮しましょう。)
ただし、当然先生が圧勝してしまうような競争では生徒も乗ってきません。生徒が、
「この競争なら、ひょっとしたら先生に勝てるかも」
と生徒に思わせられるような競争がちょうどよいです。生徒は競争となると、俄然
やる気を発揮します。生徒のやる気を引き出すうえでは、先生が
「真面目に考えて」
と言うよりも、ずっと効果的です。
このほかにも、いろいろな競争が考えられます。
- 制限時間内に何問解けるか。(時間との競争)
- ケアレスミスさえしなければ100点が取れる小テストを作成し、必ず100点を取ることを目指して問題を解く。(理想の自分との競争)
どの競争が好ましい、といったことはありません。
授業の展開、生徒の個性に合わせて、さまざまな競争の要素を授業に適宜取込んで
頂ければよいのです。そうやって生徒を飽きさせないということも、授業における
先生の大事なスキルの一つです。
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