「抽象」と「具体」の間を行き来し、その場に合った例え話を適宜引き出す ~LEVEL2:先生が習得すべき「正しい教え方」~【第3章】【07節】Level
1つのことを教える際の「たとえ話」を複数用意するためには、教える内容を
先生が抽象化して理解してるかどうかがポイントとなります。
教える者が、教える内容を抽象的概念として捉えられていれば、複数の例を
示さなければならない場合に、「抽象」と「具体」の間を行き来し、
相手が理解できるような例に適宜具体化して説明することができるようになります。
「抽象的」な話になってしまったので、さっそく「具体化」して説明しましょう。
例えば、中学の理科の分野に「電気」があります。
電気は目に見えないため、いまいちイメージがつかめず、不得意に感じている
生徒は多いようです。
こういう時こそ、先生の出番です。
電気は目に見えないとはいえ、高校、大学レベルの電気分野を既に勉強されている
先生であれば、要は「電子の流れ」であることはご存知だと思います。
抽象化すると、『流路を何かが流れる現象』ということになります。
ここから、生徒にとってわかりやすい「何かの流れ」は何かないか、と考え、
「水」に例えられるのではないかと考えるわけです。
導線は水が流れる管に、抵抗は水車に、電池は水をくみ上げるポンプにでも例えま
しょう。そうすれば、
- 2つの水車(抵抗)は、並列ではなく直列でつなぐと、水(電気)は流れにくくなり流量が減るため、ポンプはフル稼働しなくて済む(電池がなくなりにくい)
- 2つのポンプ(電池)を直列に動かすと、より高いところから水を流すことができ、水車(抵抗)はよく回る(抵抗の発熱や豆電球の発光は増える)。
といったように、電気分野の基本的なことを直感的に理解しやすくなります。
このように様々な具体例を用いて説明をして、それらのうちのどれか一つでも、
生徒が理解、納得しやすいものがあればOKということです。
個々の生徒によってわかりやすい説明は異なるので、説明もある程度は
「数打ちゃ当たる」
といった面はあります。
教える内容を一度抽象化してから再度具体化して説明することは、相手によって
説明の仕方を変えられるだけでなく、一人の相手に対しても、さまざまな説明が
出来るようになるということです。
前節でも述べたように、先生は少ししつこいくらいに説明するくらいがちょうど
良いのですが、その際、同じ言い方、同じ説明の仕方では、さすがに生徒は飽き飽き
してしまいます。
そこで、最初に説明した方法とは異なる方法、異なる例で、同じ内容を繰り返し説明
することが必要となるのです。先生が「抽象」と「具体」の間の翻訳家となり、
両者の間を自由に行き来できるようになれば、説明の方法はどんどん広がって行き
ます。
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