「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

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子供は『図画工作』が好き ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【04節】

学校の図画工作の授業が嫌い、という生徒はなかなか聞かないように思います。

それぐらい、生徒にとって「何かを作る」行為は、楽しいものだということです。

 

特に理科や算数の授業では、「自分で作る」時間を作りたいものです。

 

それは決して、「自分で作る」という楽しい時間を提供したいというだけでは

ありません。

 

自分で作るという作業を経ることで、その経験が「印象」として頭に残りやすく

なり、授業を通して覚えてほしい大切なことを覚えることも可能だからです。

 

 

ここで一つ、私自身が小学生だった時に「印象」に残っているお話をしましょう。

 

 

小学生の算数では、面積や立体の単位を勉強しますが、それら単位の換算が苦手な

生徒は多いです。

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また、単位の換算は図形・数量の問題を解く上での基礎であるため、

暗記に頼る先生・生徒も多いかと思います。

 

決して暗記が悪いとは言いませんが、暗記となると、時間が経つにつれ、

どうしてもうっかり間違ってしまうこともあります。

 

特に私は、こうした暗記が大の苦手でしたので、大変苦労しました。

 

例えば、「1リットル=1000cm3」という換算ですら、暗記には頼りたくなかった

(頼れなかった)のです。

 

そこで私は、「1リットル」を体感として覚えるために、

10cm×10cm×10cm(つまり1リットル)の立方体をつくるよう勧められました。

 

そこで、厚手の方眼紙を買ってきて、そこから立方体の展開図を切り出し、

自分で1リットルの立方体を作ったのです。

そして「おお、これが1ℓか!」とそれをまじまじと見つめたのです。


それ以降、「1リットルは?cm3」を考える際には、いつもこの自作の立方体を

思い浮かべるようになりました。

 

ただ単に「1リットル=1000cm3」として覚えるのではなく、

「たしか1リットルは立方体で作れたな。手のひらいっぱいに乗るくらいの大きさ

 だったから、1辺の長さは、1cmでも100cmでもなく、10cmだったんだろうな。

 ということは10cm×10cm×10cm=1000 cm3だな。」

というように覚えた(その都度導出する)のです。

 

大人になったいまでも、1リットルと聞くと、昔作った1リットルの立方体が

頭に浮かびます。

 

「1リットル=1000cm3」という式は覚えようとしても覚えられない一方で、

自分で立方体を作り、それを手に持ち、まじまじと眺めた体験は忘れないのです。

 

これこそ、印象に残っている状態なのだと思います。

 

これくらいの単位の換算は暗記で覚えられた、という方であれば、こうした覚え方

は逆にまどろっこしく、難しく感じられるかもしれません。

 

しかし、実際にこうして覚えたほうが覚えやすい人もいるということを知っておいて

いただきたいのです。もし生徒が単位換算の暗記で躓いているようでしたら、

このようにイメージで覚える方法を紹介する意味でも、実際に作れるものは作って

みてもらうことも、一つの手だと思います。

 

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