「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

最初の記事

子供はきれいな絵が好き ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【05節】

特に算数や数学の授業では、

「わからなかったら絵をかいて考えよう」

ということを言う先生は多いのではないでしょうか。

 

それはまさにその通りです。

 

一般的に考えられている、「絵を描いて考えることの重要性」は、主に次の2点では

ないでしょうか。

  1. 人間が頭の中で一度に考えられる量には限界があります。絵を描き、考えていることを絵の中に書き込んでいくことで、頭を混乱させずに整理することができます。
  2. 絵を描くということは、本人の頭の中でイメージされているものを紙に転写する作業です。絵を描くことで、自らが頭の中で考えていたことを整理し、客観的にとらえることができます。

さらに、「絵を描いて教えることの重要性」は、次の通りでしょう。

  • 人間は何かを考えるとき、その対象をイメージしながら考えます。頭の中で思い描いているイメージが先生と生徒の間で異なっていれば、先生がわかりやすく言葉で教えたつもりでも、生徒には正しく伝わりません。そうした両者のズレを防ぐために、絵を描いて伝えることが大切です。

さて、「生徒も先生も絵を描くことが重要」という点はご理解いただけたかと

思いますが(むしろ、「いまさら何を・・・」と思っていただければ幸いです。)、

加えて「きれいに描く」ということがとても重要です。

 

これは『生徒に正しく物事を伝えるために』というだけではありません。

生徒が簡単には描けない絵を先生が黒板にきれいに描くと、生徒は驚きと尊敬の目で

先生を見るようになります。こうして心を動かされた生徒は、自然と先生の書いた

絵をマネしてノートに写してみようという気になることが多いですし、それ以降も、

絵をかいて考える問題を解くことが面白くなります。

 

生徒の心を動かす絵として特に有効なのは、やはり立体図形でしょう。

2次元の紙に3次元の絵を描くことが、生徒にとっては刺激的なのでしょう。

先生が板書をするたびに生徒がワクワクするようであれば、そのうち生徒も自然と

絵を描くようになると思いませんか?

 

ここで言う「きれいな絵」と言うのは、定規やコンパスを使って

「真面目に正確に描く」

ということではありません。むしろ、フリーハンドで、さらっと、でもわかりやすく

伝わる絵を描くことが重要です。


立体図形など、絵を描くことが苦手な先生は、ぜひ絵を描く練習をして、

生徒に驚きとワクワクを与えてみてください。

 

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また、絵を描くことは、生徒だけでなく先生にとっても大切なことです。

 

生徒には「絵を描いて考えろ」と言っている先生でも、授業中の板書では絵が少ない

こともあります。授業中に描く絵は、生徒の理解を助ける補足と捉えられがちかも

しれませんが、私は授業における絵は、説明の補足ではなく、授業の本質だと考えて

います。

 

説明事項のメインとして絵が存在し、その絵の補足として、文章や式による説明が

ある、といった位置づけです。

 

そうはいっても、私自身、授業中に自ら書いた板書を見直して、絵が少ないと感じる

こともありました。そんな時は「何か絵で表現すべきところがなかったか」を改めて

自らに問い直して、絵を追記していました。

 

イメージとしては、文章や式を用いた説明が半分、絵を用いた説明が半分くらいの

分量バランスがちょうどよいと思います。。

 

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子供は型にはまらないことが好き ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【06節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

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