「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

最初の記事

子供は型にはまらないことが好き ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【06節】

子供は普段、学校や家庭で、型にはまった生活を強いられる場面が多いです。

例えば、

  1. 時間の枠:チャイムが鳴ったら席に着きなさい。
  2. 行動範囲の枠:ここから先へは入ってはいけません。
  3. ノートの枠:罫線からはみ出ないよう、きれいに描きなさい。

これらの「枠」は、しつけの一環ですし、間違いなく必要なものです。

しかし、型にはまることばかり強要しては、子供の創造性を発揮させ、伸ばすことが

できませんし、なにより生徒がワクワクできません。

 

ですから、授業の中でも、許される範囲で、あえて枠から外れた授業をすることが、

生徒にとっても先生にとってもメリハリがつき、印象付けるためにも効果的だと

考えています。


ここで一つ、私が塾で行っていた、少し枠から外した授業を紹介しましょう。

 

場面は、小学2年生に掛け算の九九を教えるところです。

最初に掛け算の考え方を教えるとき、例えば3の段の九九を一緒に考えるときは、

枠から外す必要はなく、まずは一般的な学習参考書に書いてあるような方法で

3の段を一通り導出します。

 

そして、「さんいちがさん、さんにがろく、・・・」と声に出して繰り返し読んで、

覚えてもらうこともセオリー通りです。

 

そのうち、3の段、4の段、5の段と覚えることが増えてくると、それまでに習った

2の段から5の段までを復習することが必要になります。

 

ですが、以前と同じようにきれいに九九を黒板に書いて復習するのでは、

生徒としても「またか・・・」という気分になり、面白くありません。

 

そこで、

「先生がこれから九九の問題を次々に黒板に書いていくから、すぐに答えてね」

と、ゲーム感覚で九九の問題を出していきます。

 

ここで、決して九九を整列してきれいに黒板に書きません。

黒板内のあちこちに、ランダムに、あえて文字を傾かせながら、

生徒が1問答えるごとに次々と次の問題を書いていきます。

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答えてもらった答えは黒板に書きませんし、生徒はノートに何も書かず、

口頭で答えるだけでいいです。問題だけを次々と生徒に”浴びせる”のです。

 

すると、先生がランダムに次々と書く九九の問題に食らいついていこうという、

一種の競争心理を働かせることもでき、生徒は乗ってきます。

 

もし間違ったら、「そうだっけ?」と確認し、ノートを見直すなどして正しい答えを

答えてもらいます。

一度間違った問題は先生が覚えておき、繰り返しその問題を出します。

 

これを繰り返し、一度間違った問題もスラスラと正しい答えが言えるようになれば

九九の復習としてはOKです。


こうした工夫を授業に取り入れることで、生徒は授業に飽きることなく、

ゲーム感覚で楽しく復習することができますし、先生としても、短時間で多量の

復習を効率よく行うことができ、生徒の弱点克服も同時に可能になるのです。


重要なことは、最初に基本を理解させるところでは、やはり枠にあてはめて教え、

基本を押さえたうえで、応用・復習をあえて枠から外して行う、ということです。

 

基本を押さえてもらう時には、枠にはめるというよりは、やはり教える上での

セオリーがありますので、それはそれとして抑えておくことも大切で、

枠にはめることと、枠から外すことのバランスおよびギャップが、

生徒への印象につながります。

 

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子供は「自分ってすごい!」と感じたい ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【07節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

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