「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

最初の記事

人間は自分の考えを否定されたくない ~Level1:生徒との関係を構築するNLP~【第2章】【08節】

話が逸れたついでに、さらにコミュニケーションにおける人間の「欲求」について考えてみましょう。


あなたが友人や恋人と話をしているときのことをイメージしてみてください。

 

 

あなたが何か自分の考えを相手に伝えたとします。それを聞いた相手が、

「いや、それはこう考えた方がいいよ」

とアドバイスをしてくれたとします。その時、あなたはどんな気分になるでしょうか。


相手の言うアドバイスは、至極真っ当な、正しい意見であることはわかります。

でも、決して良い感情は残らないのではないでしょうか。

 

「せっかく話をしたのに、簡単に否定されてしまった」

というネガティブな感情が残り、それ以降、自分の考えを話すこと自体、ためらってしまうかもしれません。人間は誰しもみな、自分の考えを否定されていい気分にはならないのです。

 

これを逆にとらえると、人間は誰しも、自分のことを受け入れてほしいという、受容に対する欲求があるのです。ですから、まずは相手のこの欲求を満たしてあげなくては、ラポールが壊れてしまいます。

 

先の例でいうと、「そう思ったんだね。」とか「確かにそういう面もあるかもしれないね。」と、まずあなたの考えに対し受容を示されれば、あなたの気持ちは害されることは決してなかったのではないでしょうか。

 


人間は得てして、相手の意見に対して「何かが違う」と感じると、途端に「そうじゃなくて」とか「いやいや、こういうことでしょ」といったように、自論を展開したくなる衝動に駆られます。

 

しかし、その衝動のままに発言してしまうと、相手の気分を害し、せっかくのラポールが崩しかねないのです。ですから、まずはその衝動をぐっと我慢し、受容の態度を示し、相手とのラポールをより強固なものにするよう心掛けたいところです。

 

相手の意見に対して物申すのは、それからでも決して遅くはありません。むしろ一度相手の受容に対する欲求を満たしてあげた後のほうが、あなたの自論を受け入れるくらいの余裕が相手にも備わり、話がスムーズに進むものなのです。

 

さて、相手の「考え」を受け入れる「受容」と同様に大切なことが、相手の「感じ方」を受け入れる「共感」です。

 

自分の考えと同様、「楽しかったよね」「いやだよね」「大変だったね」といったように、相手に感じ方も共感されれば、やはり気分はいいものですし、さらに心を開き、自分の感じ方、考え方を話したくなるのではないでしょうか。

 

逆に、「この人には私の気持ちが伝わってないな」と思えば、ネガティブな印象が残ってしまいますし、それ以上自分の話をすることはためらってしまうでしょう。


もしかすると、

「必ずしも相手の考えに賛成できるわけではない」

とお考えになる方もおられるかもしれません。

 

しかし、ご安心ください。受容と共感は、決して「同意」することではないのです。

 

「そう考えたんだね。」「そう感じたんだね。」ということは示すべきですが、決して「自分もそう思うよ」とは言う必要はありません。

 

そもそも、「自分はそう思わない」からこそ、一旦は相手を受容・共感し、それから徐々に自説を展開していこう、ということです。受容と共感は、相手を肯定することでも否定することでもありません。相手のありのままを受け入れることです。


受容と共感とは、NLPの根幹に当たる大事なことだと思います。

以前のこちらの記事

NLPとは? ~Level1:生徒との関係を構築するNLP~【第2章】【02節】

でも紹介した図

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では、2人の人がお互いに何か感じたこと、考えたことを情報として相手に伝える作業を繰り返すことで、コミュニケーションが成り立つことを示しました。

 

自分の感じ方、考え方、情報の発信の仕方を再プログラムすることがNLPであると説明しましたが、逆に相手に対しては、相手の感じ方(Neuro)、考え方(Linguistic)といった相手のプログラムを受け入れる姿勢をまずはこちらから見せようということです。


相手とのラポールを大切にするためにも、相手の「受容」と「共感」に対する欲求を満たすことを意識してみてはいかがでしょうか。今までうまくいっていなかった人との関係も、良い方向に変わっていくかもしれませんよ。

 

次の記事

鋭利な刃物の扱い方【第2章】【コラム①】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

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