先生も、まずは基礎から ~「生徒の印象に残る授業」実践への道筋~【第1章】【01節】
それでは、「生徒の印象に残る授業」の実践を目標に、
そのための先生の心得や授業の進め方を紹介していきたいと思います。
まず初めに、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。
それは、
「生徒の印象に残る授業」を目指すことは、
あくまで先生として教える行為の「基礎」ができている上での
「応用」に相当する部分だということです。
印象に残す授業を意識することよりもやるべきこと、取り組むべきことがあります。
「基礎」の習得なくして、「応用」の実践に至らないことは、生徒の勉強と同じです。
最後の第4章で、「印象に残す授業」に関するお話をしますが、
その前段となる第2章、第3章の内容(ここが先生の「基礎」に相当します)を、
まずはぜひ身につけていただきたいと思います。
では、まずは先生が習得すべき「基礎」となるスキルとは何なのか、
考えてみましょう。
もちろん、
生徒に教えるコンテンツを先生が十分に習得していること
は言わずもがなですが、これは、塾講師として採用されている方や学校で先生を
されている方であれば、既に習得されている部分(いわゆる授業内容)だと思います
ので、既に身につけられているものと仮定して、本書では触れません。
むしろ、教育者として、授業内容の理解と同じくらいに、場合によってはそれ以上に
重要なことがあります。
それは、
生徒に対するときの立ち振る舞いであったり、
生徒との良好な関係を築くスキルであったり、
物事をわかりやすく教える技術であったり
します。
あなたは、先生にはどんなスキルが必要だと考えていますか。
そもそも、「いい先生」とは、どんな先生でしょうか。
今までに受けた授業の中で、あなたの理想に近い授業はなかったでしょうか。
その授業の先生は、どのように授業を進めていたでしょうか。
その先生にはどんなスキルがあったのでしょうか。
生徒の視点から考えて、どんな先生が理想でしょうか。
いろいろな声が上がってきそうですが、例えば次のような意見ではないでしょうか。
- 生徒のモチベーションを上げるのが上手
- 勉強の面白さを、授業を通して伝えられる
- わかりやすく説明するのが得意
- 生徒一人一人にしっかり向き合い、個性を生かし伸ばすことができる
- 子供の声を親身に聞き、受け取り、気を配ることができる
- すぐに怒らない
どれもごもっともですし、私も同感です。
ここで1つ気が付くことは、先生の仕事は「勉強を教えること」と考えがちですが、
こうして「理想の先生」像を考えてみると、勉強を教えることに関することばかり
ではないということです。
これらの多種多様なスキルを、「先生に必要なスキル」として大別し整理したものを
下記に示しました。ピラミッドの下部にあるものが先生にとって基礎的で重要な
スキル、上部に行くほど応用的なスキルとなるイメージです。
図の解説
下の2つが達成されているだけで、
十分「いい先生」になることはでき、まずはここを達成すべき。
その先として、一番上を常に先生は意識するとよい。
とはいえ、すべての授業で理想的な
「その生徒の特性に合った印象に残る授業」
ができなくても構わないし、おそらくそれは難しいことだ。
授業を進める過程で、その生徒の特性を生かした授業展開が可能になった
ときに、その機会を逃さず、しっかり生徒の「印象」に残すことが
できれば十分である。
そうした授業が"たまに"出来るだけでも、生徒の先生に対する見る目、
勉強に対する態度は大変望ましいものになってくる。
最も基礎的かつ重要なスキルは、生徒とのコミュニケーションスキルです。
「生徒のモチベーションを上げる」
「生徒一人一人にしっかり向き合う」
「すぐに怒らない」
といった点は、この「コミュニケーションスキル」という枠に含まれるかと思います。
次に重要なスキルは、「教え方」に関するスキル、つまり
正しいことを正しくわかりやすく伝える技術です。
ここが「先生」と聞いてまず最初に思いつく部分かと思います。
もちろんこのスキルも大切なのですが、
それより大切なこと(=コミュニケーションスキル)があるということ、
また、印象に残す授業を目指すためにはこれだけでは不十分である、
ということをこの図は表しています。
以上2つの、先生の基本的なスキルを土台として、
ようやく「印象に残す授業」を実践するためのスキルが応用レベルとして登場します。
では、これら1つ1つのスキルについてもう少し詳しく説明したいと思います。
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1にも2にも、生徒とのコミュニケーション ~「生徒の印象に残る授業」実践への道筋~【第1章】【02節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業