「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

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目次

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落合元監督に学ぶコーチング ~Level2:先生が習得すべき「正しい教え方」~【第3章】【コラム②】

2004年から2011年の8年間にわたり、プロ野球中日ドラゴンズの監督を務めた

落合博満さんのことを紹介したいと思います。

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落合博満さんは、現役時代は3冠王を3度獲得、また監督としても8年間のうち

リーグ優勝4度という輝かしい成績を収めました。

その一方で、実は指導者としても一流の方なのです。

 

ここでは、落合さんの著書「コーチング」を参考に、落合さん流の指導法を

紹介したいと思います。 

コーチング―言葉と信念の魔術

コーチング―言葉と信念の魔術

 

 

著書の中で、多村仁選手(現横浜ベイスターズ在籍)に対してバッティング指導を

したときのエピソードが書かれています。それは、2001年の春、落合さんが横浜

ベイスターズのキャンプで臨時コーチを任されたときのことです。

 

当時横浜ベイスターズに在籍していた多村選手のバッティングを指導することに

なりましたが、バッティングスイング、フォームに関する細かいことは、

何一つ「こうしなさい」と言わなかったそうです。

 

では、落合さんはどんな指導をしたのか。

 

それは、2~3時間の間に1000~1500回、ひたすら本人にバットを振らせ、

只々それを見ていたのです。

 

見ているだけで何が変わるのか。

 

それが、変わるのです。

 

2時間に1000回以上のスイングをするとなると、

多村選手がそれまで自分で意識して作っていたフォームで打つことは、

体に余分な負荷がかかり、続かなくなってしまうのです。

 

そして、体に負荷がかからず楽に打てる、自分自身の体に合った打撃フォームに

自然と変わっていったのです。

(落合さん自身も、現役時代はこのような方法で自身のバッティングフォームを

作ったそうです。)

 

それまで目立った成績を上げられていなかった多村選手は、これを機に結果を

出し始め、2004年には打率3割、ホームラン40本、100打点を記録する大打者に

成長したのです。

 

ここで大切なことは、本人に何かを気付かせる、身につけさせるために指導者で

ある落合さんが行ったことは、ただただ見守ることだけだったということです。

 

落合さん自身、

「最近の社会は、教える側は教えることに、また教えられる側は教えられることに

"慣れ"過ぎていると思える」

「こうした傾向は、教える側は画一的な方法論しか持てなくなるし、一方の教えら

れる側からは自ら学ぼうとする姿勢を奪い取ってしまう、と感じている。」

と述べています。

 

他にも、著書の中でコーチングに関して次のようなことを述べています。

  • 教えるのではなく、学ばせる
  • 押しつけない。ヒントを与える
  • 手取り足取りは、若い者をダメにする。アドバイスは”ヒント”だけ
  • 日本では、口を酸っぱくして教えられるのが良いコーチで、それができないのは、何も仕事をしない悪いコーチと言われてしまう。だが、決してそうではない。~中略~ 本当に気をつけなければならないのは、指導能力のない者が、素質の高い者の入り込んではいけない部分に入り込んでつぶしていくことなのだ。
  • あくまでも主体は選手。相手の感覚でしか物事は進められない
  • 「なんだ、そんなこともわからないのか」は上司の禁句

いかがでしょうか。どれも、本ブログで述べている内容と重なる部分があると感じて

いただけるのではないでしょうか。

 

落合さんは、マスコミには「オレ流」と呼ばれ、あたかも一般的な考えではなく、

独自の価値観に従っているかのようにもてはやしていますが、決してそんなことは

なく、むしろ、原理原則に従った、「本当に正しい方法」を貫いている方だと思って

います。

 

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