「記憶」ではなく「印象」に残す授業

元塾講師の綴る、実践に基づいた教育論。日本の教育を、より良くするために。

当サイトの記事は、書籍のように最初から通読いただくことを想定しております。

もしよろしければ、ぜひ最初からご覧いただければと思います。

目次

最初の記事

★目次★

プロローグ

授業で印象に残っていること

一通の手紙

 

第1章 「生徒の印象に残る授業」実践への道筋

先生も、まずは基礎から

1にも2にも、生徒とのコミュニケーション

生徒が納得できる「正しい教え方」

相手は「子供」である

 

第2章 Level1:生徒との関係を構築するNLP

授業において最も大切なもの

NLPとは?

NLPの基本前提

ラポールを築く(ペーシング)

ラポールを築く(バックトラック)

リーディングによって、相手を導く

リーディングを理解し、応用する

人間は自分の考えを否定されたくない

鋭利な刃物の扱い方【コラム①】

NLPの授業への応用『先生は全てを受け入れろ』

NLPの授業への応用『先生は生徒に負けることを恐れるな』

NLPの授業への応用『結果よりも行動を、行動よりも能力を、能力よりも人間性を褒める』

生徒の成功体験を積み重ね、自己肯定感を高めることこそ先生の役目【コラム②】

 

第3章 Level2:先生が習得すべき「正しい教え方」

「教える」の基礎

教えるときの「1つの大事なこと」

生徒を導くプロセス

教えるときにやってはいけないこと

相手のレベルを知るには、実際にやらせてみるのが一番

大切なことは、くどいくらいに説明する

「抽象」と「具体」の間を行き来し、その場に合った例え話を適宜引き出す

先生は翻訳家に徹しろ【コラム①】

落合元監督に学ぶコーチング【コラム②】

 

第4章 Level3:子供の特性の授業への生かし方

生徒の印象に残すには 

子供は競争が好き

子供は「演じること」が好き

子供は『図画工作』が好き

子供はきれいな絵が好き

子供は型にはまらないことが好き

子供は「自分ってすごい!」と感じたい

生徒のモヤモヤを解消し、”!”を生み出す

先生は大事なことほどノートに書かかない生き物?【コラム①】

 

エピローグ

学校を作りたい 

最新の教育を施すことが求められる古い教育者 

先生の「自動アップデート」

 

 

★参考文献★

 

 

★参考文献★

1. 手にとるようにNLPがわかる本 加藤聖龍 かんき出版

手にとるようにNLPがわかる本

手にとるようにNLPがわかる本

 

 

2. 先生と生徒の心をつなぐNLP理論 堀井恵 三修社

先生と生徒の心をつなぐNLP理論 子どもの夢を育むために

先生と生徒の心をつなぐNLP理論 子どもの夢を育むために

 

 

3. 広辞苑 第6版 新村出編 岩波書店 

広辞苑 第六版 (普通版)

広辞苑 第六版 (普通版)

 

 

4. 教え方の鉄則 松尾昭仁 マガジンハウス

部下が育てば上司が得する!  教え方の鉄則 (ビジネス鉄則シリーズ)

部下が育てば上司が得する! 教え方の鉄則 (ビジネス鉄則シリーズ)

 

 

5. 人間発達学 岩﨑清隆・花熊曉・吉松靖文 医学書院

人間発達学 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野)

人間発達学 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野)

 

 

6. コーチング 言葉と信念の魔術 落合博満 ダイヤモンド社

コーチング―言葉と信念の魔術

コーチング―言葉と信念の魔術

 

 

先生の「自動アップデート」 【エピローグ】【03節】

「先生そのものを短期で入れ替える」

と言うと、やや過激な意見に聞こえるかもしれません。

しかし、既にそうした先生の入れ替えが常に実現されている教育現場があります。

 

それが、塾です。

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塾には、正社員として何年も講師を続けておられる方がいらっしゃる一方、

大学生のアルバイト講師の方も多数在籍しています。

学生のアルバイト講師は、大学入学から卒業までの数年間しか在籍せず、

毎年春に講師の「アップデート」が自動的に行われています。

 

しかもみなさん、つい最近まで高校に在籍していたわけですから、

最新の教育を受けて育っています。

さらに、勉強において自らはどこで躓いたのか、それをどのように乗り越えたのか、

といった、内容の濃い経験談を年下の生徒に伝えることもできます。

 

20年、30年もの人生の先輩ではなく、こうした、1歩2歩先を進んでいる先輩が、

後輩に自らの経験をもとに何かを伝えていく、という早いサイクル

(大学生講師が小学生高学年に勉強を教えることを想定すると、

 10年程度のサイクル)

を回していくことができる環境が、塾にはあるのです。

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例えば、これから徐々に教育の現場に電子黒板や電子教科書といったITツール

取り入れられるものと思われます。その時、自らは紙の教科書でしか勉強したことが

ない先生と、自ら電子教科書で勉強した経験のある先生とでは、どちらの方が

電子教科書を有効に授業で用いることができるでしょうか。

 

恐らく断然後者でしょう。

 

教育に用いるツールだけでなく、これだけ社会の変化が速いと、教える内容も

どんどん変わっていくかもしれません。

 

こうした教育現場の急な変化に対応するためにも、先生が自動アップデートされる

仕組みを持っている塾は、これからの教育において重要な位置を占めるのではないか

と考えているのです。

 

一方、先生がどんどん入れ替わるということは、先生としての「基本」を身につけ

なければならない人が毎年数多く教育の現場に入ってくるということです。

 

そうした”ルーキー”先生には、本ブログの内容などをぜひ勉強いただき、

最低限抑えるべきポイントを抑えて、工夫できるところは工夫しながら授業に

取り組んでいただきたい、というのが筆者の最大の目的です。

 

本ブログが、塾における教育レベルの底上げに寄与し、一人でも多くの生徒により良い

教育を提供することの発端となってくれるのであれば、それは著者の望外の喜びです。

 

幸いにも、教育に関して興味、関心、問題意識を持っている大学生は少なくないよう

に感じています。ぜひその気持ちを大切に、塾講師として教育の現場で活躍され、

日本の100年後を変え得る人材の育成に取り組んでいただきたいと、

切に願っております。

 

ありがとうございました。

 

次の記事

★参考文献★ - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

最新の教育を施すことが求められる古い教育者 【エピローグ】【02節】

日本はこの20年間、「失われた20年」と呼ばれるほど、政治、経済、国際関係など

多岐にわたって多くの問題が付きまとい、”閉塞感”が国民を包み込む国として

推移してきました。

 

私のような、バブル経済を知らない世代からすれば、

「こうした閉塞感漂う国こそ日本なのだ」

と思ってしまう面も少なからずあります。

 

もちろん、こうした閉塞感から抜け出したいという気持ちは私自身強く持っています

し、同じ考えの方も多くおられるのではないでしょうか。


日本の100年後を明るいものに変えるためには、100年後の日本を創る子供たちに

変わってもらう必要があります。

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しかしその子供たちに教育を施している親や先生方が100年前の教育を受けて育ち、

その影響を大いに受けているという点が、国や教育を変えるために立ちはだかる、

1つの大きな課題であるように思います。

 

まして、時代の変化が急速な現代において、100年前どころか50年前、30年前の

教育スタイル・教育内容であっても、使い物にならないくらいに古いということに

なる可能性は十分あります。

 

時代の流れに沿った授業を展開するには、例えば、先生が教える内容を常に最新化

していく仕組みや、先生そのものを短期で入れ替えていくような仕組みが

必要なのかもしれません。

 

次の記事

先生の「自動アップデート」 【エピローグ】【03節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

学校を作りたい 【エピローグ】【01節】

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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本ブログは、特に塾で講師をされている方向けの、堅い言葉でいうと

「教育指導書」のような位置づけで書かせて頂きました。


私はかねてから、「塾」という教育の場の重要性を感じておりました。

それは、生徒・講師の双方にとって自らを成長させる素晴らしい環境だからです。

 

塾の講師には大学生のアルバイトの方が多いと思いますが、そうは言っても生徒から

見たら「先生」であることには違いありません。

 

ですから、若い講師の方々にも、漠然と勉強を教えるだけでなく、

生徒とのコミュニケーションの取り方や、生徒を「導く」意識と方法について

一度しっかり考えていただき、できる範囲でいいので、何か工夫を試み、

変えるべきことがあるのであれば変えていってほしいと思っています。

 

そうした経験は、講師ご自身の人生にとっても、決してマイナスではありませんし、

プライベートや別の職場に移ってからでも、大切な副産物が得られるものと信じて

います。

 

そうした講師の方をサポートする、講師の方が参考にできる書籍があったらいいな

と思い、探してみたのですが、教育関係の書籍は数多くあれど、塾の講師向けの本

は全くと言ってもいいほど皆無であったため、今回私が筆を執ることとなりました。


最後に、私がなぜ塾という環境を重要視しているのか、という点について、

少しお話ししたいと思います。

 

次の記事

最新の教育を施すことが求められる古い教育者 【エピローグ】【02節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

先生は大事なことほどノートに書かかない生き物? ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【コラム①】

私自身、長年教育を受けてきた過程で一つ気づいたことがあります。

それは、「先生は(生徒にとって)大事なことほど黒板に書かない」ということ

です。

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先生は(私自身が講師をしていた時もそうでしたが)、

その日の授業の中で教えるべきことを事前に整理し、授業のポイントとなる点、

必ず生徒に理解して覚えてほしい点を、板書にも必ず書こうと準備をします。

 

そして、その通り授業を実施し、先生は満足します。

 

しかし、先生の思考回路と生徒の思考回路は異なるため、先生としては

「今日の授業のポイントは○○」

というように黒板にポイントを強調して書いたとしても、それが生徒には

十分伝わらず、理解が得られないことは多くあります。

 

生徒がいまいち腑に落ちていないような顔をしていたら、もちろん先生はそれを

見逃さず、更なる説明を加えることになります。

 

板書に何かを書き足したり、補足としての図を描いたりしながら、

生徒にわかるようにもう一度説明を行い、その結果、生徒がしっかり理解してくれた

とします。

 

その場合、生徒にとって重要なのは、先生が最初に書いた板書における「ポイント」

ではなく、先生が後から補足として書き足した説明や図なのです。

 

つまり、先生が授業を通して伝えたい「大事なこと」と、

生徒がその「大事なこと」を理解するために必要だった「大事なこと」は異なる

ということです。

 

この場合、後者の、生徒が授業を理解するために必要な「大事なこと」こそが、

生徒にとってのその授業におけるポイントであり、生徒にとって最も「大事なこと」

なのです。

 

こうした補足説明によって生徒が理解してくれた際には、その補足説明こそが

本来先に説明、板書すべき内容であったと反省し、それらを改めて綺麗に

整理・板書し、生徒にノートへ書き写してもらうよう、促すべきなのです。

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次の記事

学校を作りたい 【エピローグ】【01節】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

 

生徒のモヤモヤを解消し、”!”を生み出す ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【08節】

私事で恐縮ですが、私自身が学生の時の印象に残っている勉強の1つに、

三平方の定理ピタゴラスの定理)の証明があります。

 

当時中学生だった私は、学校の授業で初めて三平方の定理を習いました。

その時、数学の先生は下記①の方法で三平方の定理を証明し、

とりあえず「a2+b2=c2」という定理を暗記するよう話されました。

 

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証明で導かれた式はそれほど難しいものではないので、

覚えろと言われれば覚えることはできるのですが、

どうも証明方法が強引で「美しくない」と、子供心ながらに感じました。

 

なぜ突然辺の比の話題を持ち出し、なぜ全く関係のない2つの式を足さなければ

ならないのか。なんて強引に導かれた定理なのだ。

というのが、最初の私の感想でした。

 



その数週間後、当時通っていた塾の数学テキストに、やはり三平方の定理の証明

が書かれていました。

 

その証明は下記②の方法でした。

 

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これを見たとき、正直私は感動しました。

 

学校で習った証明に比べると、実にシンプルで、視覚的にもわかりやすい。

強引に導いている感じがなく、自然と導かれた定理、といった感じがしました。

 

この証明方法はまさに私に”印象”として残り、証明方法を暗記しようとしなくても

既に頭に残っていました。

 

おかげで、周りの生徒のほとんどは覚えていないであろう

三平方の定理の証明方法を覚えることができ、テストで突然、

三平方の定理を証明せよ」

といった問題が出題されても、解答することができたのです。

 


私のこの体験を振り返ると、次のようなことがわかります。

 

 

すなわち、

「それまでモヤモヤしていたことが、自分にとってしっくりくる方法で説明され、

すっきり理解できるようになると、そのギャップも手伝って印象として強く残る」

ということです。


私が講師となってからも、三平方の定理に限らず、数学ではいろいろな

「定理の証明」を授業で行いましたが、その時に意識したことは、

その生徒が学校の授業で習った方法とは異なる方法で証明する事でした。

 

これは、第3章で挙げた

「1つのことをいろいろな視点でしつこいくらいに説明する」

ことにも通じます。

 

その生徒にとって、どの説明方法、証明方法が最もしっくりくるのかは、

その生徒しかわかりません。またその生徒も1つの説明しか紹介されていなければ、

世の中にはその説明しかないのだと思い、自分にしっくりこない説明・証明方法で

無理に暗記しなければならないことになってしまいます。

それは、とても不幸なことです。

 

ですので、先生は、

  1. 1つの物事にもいろいろな考え方があること
  2. いろいろな考え方の中でその生徒にあった考え方を見つけてあげること
  3. 2により、生徒が抱えているモヤモヤをすっきり解消させて上げること

を意識することで、生徒に”!”を生み出しやすくなり、印象に残る授業にできる

可能性を高めることができるのです。


三平方の定理の証明に話を戻すと、最初に私が学校の授業で聞いた証明法でも

数学の授業としてはもちろん十分なのですが、

「生徒の印象に残す」(少なくとも私の印象に残す)

という点では、難しい方法だったように思います。

 

ですから、先生自身、授業で教える事1つ1つについて、日ごろから

「他にうまい説明の仕方はないだろうか。」

とアンテナを張って、教え方のレポートリーを殖やすことが大切だと思います。

 

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先生は大事なことほどノートに書かかない生き物? ~Level3:子供の特性の授業への生かし方~【第4章】【コラム①】 - 「記憶」ではなく「印象」に残す授業

 

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